「アゼルバイジャンの今後を握るロードマップ」

2016年12月6日、政府が出した「アゼルバイジャン共和国の経済見通しに関する戦略的なロードマップ(Azərbaycan Respublikasının milli iqtisadiyyat perspektivi üzrə Strateji Yol Xəritəsi)」の核となるのは、合計11の分野に関する12項目を中心に経済の多角化を進めようというものでもあります。

これは、2020年までの経済発展戦略と行動計画を定めた短期的視点、2025年までの中期的視点、2025年以降の長期的視点と3つのタイムスケジュールからなっています。

短期的な戦略に課せられたものは、最優先すべき事項にフォーカスしつつ、中長期時代における経済発展の土台づくりです。すでに現時点で観光業や農業といった非石油分野における発展が見られるようになっています。


では、政府はなぜこのようなロードマップをつくったのでしょうか。


その要因となるものが、2014年に起こりました。2014年までの過去10年間、アゼルバイジャンの経済発展のスピードは世界でもトップクラスにありました。


アゼルバイジャンの国家統計委員会の情報によれば、2004年~2010年の年平均経済成長率は16.9%、アゼルバイジャン経済への投資は年平均17.9%とかなり高かったのです。


そして、先ほども申し上げたように、石油戦略が大成功したことによって国家資産は大幅に増加。GDPを上回るほどの潤沢な資金が創出されました。その収入を活用して、国内のインフラ整備、非石油分野発展の支援、社会福祉の改善が進んだのです。


ところが、2014年に石油価格が下落。さらに、アゼルバイジャンの主な貿易パートナーの経済状況の悪化により、我が国の経済発展も減速し始めたのです。2011年~ 2014年の間には、年平均経済成長率が2.7%に、アゼルバイジャン経済への投資は年平均11.9%にまで下がってしまいました。


そのために、アゼルバイジャンは新たな経済発展モデルへの移行を余儀なくされ、経済発展を持続的で確実なものにするためのモデルが徹底的に調査されたのです。


今後のアゼルバイジャン経済は、「アヴァンギャルドセクター(先端的分野)」に注目しながら、国営企業よりも民間企業、生産よりも加工、低度技術より高度技術を要する分野、低熟練労働よりも高度の熟練労働を必要とする分野、低価格の市場よりも高価格の市場を発展させることにより、経済バランスを改善し、安定を図る戦略へと変わりつつあります。また、こうした流れを受けてビジネス環境もより良くなることが期待されます。


加えて、新たな金融政策とその健全化、通貨政策の改善、海外進出する可能性の向上など4つの動きにより、経済事情はさらに良くなると考えられています。


●1つ目は、財政の安定と変動相場制に基づいてつくられる金融政策。財政と金融政策のバランスによって、マクロ経済の安定の確保が考えられます。
●2つ目は株式市場について。国営企業の多くを民営化することによって、経済的なダイナミズムが期待できます。
●3つ目は、人的資本の開発についてです。国家経済政策を実現 させるため、先端分野における新たな労働市場を担う人材を育て ていくことが考えられます。
●最後に4つ目は、ビジネス環境のさらなる改善によるアゼルバ イジャン経済の持続的な発展です。
現在、アゼルバイジャンが注目しているのは、人口が増加傾向 にあるアジア市場や開発途上国の東南アジア諸国です。


というのも、アゼルバイジャンはユーラシア大陸のド真ん中に あり、北と南、西と東を結ぶ国ですから、アジア諸国の経済成長 はアゼルバイジャン経済にも大いに影響すると考えられます。
また、国家としても、民間企業においても、バイオテクノロジ ー、ナノテクノロジー、情報、通信、産業、金融等の分野におい ても、高度な最新技術を取り入れる環境を整えることも急務です。 最新技術の輸入と同時に、それを使いこなせる人材開発も併せて行う見込みです。

 

『アゼルバイジャンが今、面白い理由』(KKロングセラーズ、2018年) pp.111-114

 

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